Narrative発起人「うえみずゆうき」と申します。〜後編:99%のアーティストには活気あるシーンが必要だ!と思った〜

text by うえみずゆうき

福岡の音楽人の物語を伝えていくメディア「Narrative」

発起人である「うえみずゆうき」が、Narrativeをはじめるに至った背景を前後編に分けてお送りします(前編はこちら)。後編は、福岡の音楽シーンへ思うこと、Narrativeを立ち上げるまでの頭の中を振り返ります。

そもそもシーンがないのか、それともただ情報がないのか

血眼になって検索する糸山

2016年のとある夏の日、糸山(Narrativeもう1人の発起人)とカフェで話していました。

「最近の福岡のおすすめのバンドは?」 「全然知りません」

その場でスマホを取り出し、検索してみたものの、ほとんど実態が見えてきませんでした。 「福岡の音楽シーンは、一体どうなってるの?」これだけ情報で溢れかえる現代に、ほしい情報がないという不便さを痛烈に感じた出来事でした。

情報が見つからなかった原因は、大きく3つ考えられます。

  1. 福岡の音楽シーンは壊滅した。
  2. 福岡の音楽シーンは存在しているが、情報が発信されていない。
  3. ぼくたち私たちの検索能力があまりにも乏しい。

僕たち2人は、おそらく一般レベルの検索能力は持っていると思うので、「検索能力」の線は考えにくいでしょう。ともすれば、「シーン壊滅」か「情報不足」か。現場に行ってみないことには分かりません。 

久しぶりにライブハウスに行ってみた

随分、ご無沙汰していたライブハウス。 知らないバンドを観に行く勇気はなかったので、友人のライブを観に行きました。

客席はガラガラ。しかも、10人ほどのお客さんは、半分以上が知り合い。 出演者が5バンドいたので、出演者の人数のほうが多いというような有様。

音楽自体は最後に見たときより確実に進化しているのだけれど、その音は数人にしか届いていない。 そう思うと少し哀しい気持ちになりました。

ライブハウス、リベンジしてみた

前回は旧友のライブだったので、初めて見るバンドも多く混じっているようなライブにリベンジ参戦してみました。

今回は、前回より多少お客さんが入っていました(それでも20人弱か)。

客層を分析すると、演者の友だち・音楽関係者が90%、音楽ファンが10%といったところでしょうか。友だちと音楽関係者が重複しているパターンがあまりにも多いので、ひとまとめにしています。この数字、完全主観なのでアテにはなりませんが、あながち間違っていない気もします。

さて、このような客層のバランスに、僕は課題意識があります。 ミュージシャンの多くが「身近な友だちに音楽を聞かせたい」などという意気込みで活動しているわけではないと思うからです。 本当は「もっと多くの誰か、自分も知らない誰かにも聞いてほしい!」というのが、本音ではないでしょうか。 それにも関わらず、身内にしか音が届かない。

「情報がない」上に「シーンが壊滅」しかけているという課題を感じたライブでした。

99%のアーティストには、活気あるシーンが必要

「なぜ、ライブハウスには身内しか来ないのか?」

その原因は5分あれば簡単に40個ぐらい思いつきそうです。 福岡の音楽シーンにおいて、これは深刻な課題です(あまりにも当たり前過ぎて、課題とすら思えていないかもしれません)。

絡まった糸のように、もはやどこから手を付けていいか分からないような状態に見えるのです。

長い間、僕はこうしたシーンの現状に対し無力感にさいなまれ、遠巻きにこのことを見ていました。 しかし、これからも音楽に携わる者として、現状の課題にただ不満を述べるのではなく、できることからはじめたいと思ったのです。

それがこのNarrativeというメディアです。 まず、分かりやすい言葉で言えば「情報不足」を解決したい。いやいや、ライブ情報はあるんです。皆さん、スケジュールを発信したり、まとめたりはされてあるんです。

でも、ちょっと想像してみてください。 ドイツ語は読めますか?おそらく多くの人はドイツ語が読めないでしょう。ドイツ語で書かれた情報を見て、どう思うでしょう。「意味不明」ではないでしょうか。

ライブ情報って、そのアーティストのことを知らないと、残念ながら「意味不明」な文字の羅列に過ぎないんです。

たとえば、「ビートルズ」がライブするとして、誰が反応するかって「ビートルズ」を知っている人でしょう。全く知らない人は来ないんです(付き添いパターンはあるが)。 「ビートルズ」という単語に反応できるのは、知っているからです。

これは、インディーズであっても同じでしょう。 そのアーティストのことを知らないとどうしようもありません。

インターネットのおかげで、発信そのものは容易になりましたが、音楽だけで伝えられるのは1%のズバ抜けたアーティストだけでしょう。彼らは天才なので、シーンの後押しなどなくても何とかなりそうです。

しかし、その他99%のアーティストには、シーンの力が必要だと考えます。 たとえば、アイドルをファンが一緒に育てていくような、そういう雰囲気が必要だと思うんです。応援しながらされながら、アーティストがだんだん育っていく。そういう豊かな土壌があることで、全体が底上げされ、質の高いシーンができる好循環が生まれる。

そのためには、「音」より手前で「人となり」を伝えることの重要性を感じます。

Narrativeでは、その人の人生背景や考えなど、あくまで「人となり」にフォーカスして紹介していきたいと思っています(私自身、一音楽人でもあり、音楽を批評する立場にはなりたくないので)。

福岡の音楽メディア「Narrative」をどうぞよろしくお願いします。