福岡の音楽シーンに感じる「時差」。風土は音楽に影響するのか?

text by 糸山晃司

福岡の電子音楽家と話をするとしばしば囁かれる福岡のシーンへの「もどかしさ」。

東京にアンテナを張ってる音楽家であればあるほどこのもどかしさを感じているようで、そりゃあ後ろ髪をひかれることなく上京していきます。

はて?

決して個人の思い過ごしでない「遅れ」、実はこれ深刻な問題かもしれません。

福岡の音楽シーンに感じる「遅れ」

他の地方都市がどうとか知りませんが、やっぱり福岡って都市のわりに音楽にちょっと疎いんじゃないかって思うことがちょこちょこあるわけです。

例えばエレクトロやビートメイカー、トラックメイカーがあんまり人気じゃない福岡。

海外や東京のトラックメイカーやビートメイカーも、ツアーじゃ京都止まりなこと多いんですよね。距離はたしかに遠いですが、問題はそこだけじゃない気もします。

ひとつエピソードを。

2013年にZepp Fukuokaにシガー・ロスが来たんですよね、単独公演で。

その公演はそりゃものすごく素晴らしかったのですが、1番印象的だったのはホールの空き具合。

フジロックのヘッドライナーを務める超ビッグアーティストですが、こりゃもう福岡は二度と来ないな、とちょっと悲しくなった覚えがあります。シガー・ロスのクラスでさえも日本ではファンは関東圏に集中しているんでしょうね。ポップス1強説・・・。

こういうことってその時だけじゃなく、エレクトロニカやアンビエント系のイベントでその後も何回か感じることがあって、何と言うか慣れ親しんでない音楽に対してあんまり興味が濃くない土地柄なのかな、って思ったりもします。

福岡人は新しい物好きとかってよく聞くけど「・・・ホントに?」って感じです。

新しい音楽へのリアクションが薄い

電子音楽などの新しい音楽が鳴る場に行くと、その土地の現在地がよく分かります。

これは特に電子音楽家からよく聞きますが、同じ音楽家でも福岡でのライブと東京や京都でのライブじゃお客さんの反応が全く違うと言うのです。

先進的な音楽をやると土地の性格がハッキリ出ます。

興味か拒絶か。

東京では「なんかよく分からんが心地よくてすごい、かっこいい」なのが、福岡では「なんかよく分からん」で終わっちゃう感覚。

よく言いますよね。今の時代上京する意味がない、と。

これに関しては僕自身の中でも賛否両論ありますが、ライブで人脈や土台を築こうとするなら、まず行って損はないと思います。

かつてはめんたいロックが流行、たしかに「風土」があった

よく日本のリバプールとか、マンチェスターとか、同じ島国で音楽史豊かなイギリスに例えられますが、福岡もかつては日本のリバプールでした。

今は都市伝説のような語り草になってる「めんたいロック」。

Sheena and the Rokkets、ルースターズ、THE MODS、そしてTh eRockersと、1970~80年代初頭にかけて福岡はブリティッシュビートに影響を受けたミュージシャンがひしめき合い、独自の音楽圏を築いていたようです。

九州男児というイメージに違わぬ男くさいロックには全国にファンがおり、たしかに風土と音楽が一本線で繋がっていた時代がありました。

まぁこの記事で触れてる「遅れ」とはあんまり関係ないですが、風土と音楽は関係ないことは全くないよ、ということです。加えて、時代を先どっていたこともあったよ、ということです。

モデルケースは京都

日本の中で東京だけが進んでるんならこんな記事書きません。ほかでもない、京都がいるから書くんです。

京都はあらゆるジャンルの音楽で一歩先を行ってるんですよね。

CLUB METROを中心としたクラブシーンが存在し、独特の色を持った小さな箱も多くて魅力的。

METROは「メトロ大學」というクラブ版カルチャースクールを長年開催したりして、アートを包括した一大ムーブメントを作っているんですよね。

まさに、ハコが先導してシーンを作っている、という印象。

ハコ以外にも、ART ROCK No.1やSECOND ROYAL RECORDS、Parallax Recordsなどレコ屋の聖地でもあり、

ART ROCK No.1(京都)

night cruising涼音堂茶舗など、エレクトロニカ系の良質なレーベルもとにかく多い。

町が音楽都市として機能して東京に負けない盛り上がりをもう何年も見せているんですよね。京都は前衛的な音楽が次々誕生してますし。

世界にまでその才能を知らしめるMadegg

独自の音楽都市として勃興するにはマイナーな音楽への関心が必須

新しい音楽がアツくならないとなかなか音楽文化って築けないものなんですよ。

音楽そのものが目新しくなくても、新鮮なエッセンスが加えられるミュージシャンが売れていくわけで。そうなると、そういう刺激を受けるシーンの中に居るに越したことはないですよね。

実際にそうやって面白いシーンを持つ土地には人が集まるし、逆の場合は人が出ていくんですね。

マイナーな音楽への関心が必須な理由はもう一つ。邦ロックやシンセポップはもう飽和状態だからです。もうこれ以上同じジャンルですんごいヤツってあんまり生まれないでしょうし。こっからはもっと踏み込んだり角度変えた音楽のほうが広がりそうです。これは個人的な予感にしか過ぎませんし、願望も含まれていますが。

んでさらに、シーンを作るためにはそんな新しい音楽が演奏されるプラットフォームが必要。

そう場所、しかも洗練された場所が必要なんです。

ここでピックアップされるミュージシャンは面白い!っていう場所が福岡にあれば、おのずと福岡のシーンの価値が上がっていきます。

さっき言ったMETROも、ライブストリーミングライブスタジオのDOMMUNEも、大阪のartyard studioもそんな感じ。

artyard studio(大阪)

それはなんとなく慈善事業からのスタートじゃないと作られない気もしてて、そのへんは正直よく分かりません。Narrativeもそんな一面を作っていく予定もありますし。

とはいえ魅力的な人は決して少なくないです、福岡。

このメディアで取材した方々も面白かったですし、素敵なイベントで福岡に人を集めてる方も居ますしね!

ただひとつ言えるのは、音楽やってるプレーヤーがもっと県外の情報に敏感にならないと、ってことです。音楽人が魅力的ってのは絶対要素ですからね。