「アーティストの価値を上げたい」福岡発エレクトロクリエイターの現在地:轟恭平(ALTER EAGO)後編

text by 糸山晃司

重ねたシンセに無機質なビート。陳腐になりそうなところだが、そこに乗っかるのは絶妙にザラついたノイズやミックスボイス、ファルセット。センス良く仕上げられた洗練された音楽。

RadioheadやMUSEを彷彿させる轟の伸びやかな声と混ざり合った電子音は、実に「カッコいい」と形容したくなる音楽を創りだします。

福岡発東京行きのエレクトログループ、ALTER EAGOのフロントマンが語る現在地と未来とは。

音楽遍歴やバンド歴についての前編より一層深く、後編では思考やお金の話へと移ってゆきます。

どこよりも新しくてスタイリッシュな音楽をやっていたい

――yahyelとか聴いてて、自分のやりたいことの一歩先をやられているのは悔しいじゃん。

新たな音楽と共に開けた景色には、大学時代では見えなかったがしかし、より洗練されたミュージシャンが溢れていました。対バンの機会があったyahyelもその一つ。そういったバンドとしのぎを削るために、轟は上京という選択肢を選びます。

Music city TENJINのメインステージ、福岡市科学館プラネタリウムのワンマンアクトを経て一皮むけたことが起因していると思いきや、上京は2017年の初めには決めていたそうです。

話しはここから、アーティストとイベント、そしてお金の話になっていきます。

アーティストの価値を意識してほしい

――福岡にいて感じたのは、アーティストへの扱いやリスペクトがもうちょっとあれば嬉しいかな、ってこと。ギャラの話は当然のように出ないし、対バンの良さやステージの価値を見返りに当たり前のようにノーギャラでのライブがある。もっとバンドも企画側もお金について考えないといけない気がする。

ミュージシャンとしてやっていきたいっていう心情のみ。福岡にこだわるのは東京へのコンプレックスでしかないんじゃないか。福岡に居て東京のそこそこいいバンドのツアーの対バンに充てられるより、自らが東京に行き、呼ばれる側になりたい。轟にとって福岡のバンドというアイデンティティは不要で、上京に際してバンド名を変えてイチから再スタートしようとすら考えます。

レーベルどうこうではなく、アーティスト自体が明確なビジョンを持って活動できる地力がなにより大事と語る轟。どんな場所でも評価されるアーティストになるためにも、東京という場所へ移ります。

今はWEBデザインを学んでちょこちょこ依頼を受けながら仕事をしている轟。仕事のしがらみがないのも上京に繋がったのかもしれません。

――別に何かを成し遂げたから上京する訳じゃなく、それは自分たちの音がどこでも通用するって自分に対して証明できればいいわけで。ただ福岡は東京へのコンプレックスが絶対あるから福岡の人たちに認めてもらうためにも東京で活躍したい。

狙うは東京からの「逆輸入」といったところでしょうか。まさに自信を持ち自分を保つために東京へ移り行きます。

創作の形態、バンドであることにこだわりはない

ALTER EAGOが4人だったころ、まったく曲が作れなくなりました。彼は創作の形態についてこう言います。

――自分ひとりでの創造にも手一杯なのに、4人のことを考えて音楽を作ることができなくなった。意外と自分が思ってたより自分は稚拙でまだまだ研究が必要だと思った。そうなると、自分自信が満足する音楽を作ることに専念し始める。じゃあバンドってなに?って思うようになった。

自分のために自分がやりたい音楽が見つからない状況が1番ストレスであることに気づいた轟。ALTER EAGOを結成して自分のやりたい音楽を模索し続けています。

――自分が自分のために正直にわがままに音楽やりたいだけなんで、形態にはまったくこだわってないし、今はALTER EAGOも個人のプロジェクトっていう考え方でいるようにしてる。

轟自身が大きく影響を受けたRadioheadがそうであるように、ALTER EAGOももはやバンドという概念を超え「グループ」や「プロジェクト」という存在へと進化しました。

結成からメンバー変更、Music city TENJIN、プラネタリウムでのワンマンショーを経たALTER EAGOの現在地。そして学生時代から自分自身の内面とずっと葛藤してきた轟の現在地。創作こそが彼のアイデンティティであり続ける以上、これからも悩み続けることでしょう。しかしその先に、その葛藤の分だけ洗練された作品が作り上げられるはずです。

轟恭平:エレクトログループALTER EAGOのフロントマン。2017年10月には福岡市科学館内プラネタリウムにてワンマンライブを行うなど、既存の枠を超えたステージングを追求。2018年より活動拠点を東京へ。