「矛盾するものを同居させたい」誰も読めない無類の仙人:abelest 前編

text by 糸山晃司

へんてこなピアスにいつものニット帽。その日もabelestは強烈なアイデンティティを纏っていました。

予想の斜め上を行くサンプリングと読めない曲の展開、それでいてもしっかりと成立させるセンス。

奇才abelestの感覚はいかにして養われたのかに迫ります。

「音」にトリップした小学生

――「小学校の時に入ってたオカリナクラブで、みんな一斉におんなじ音を出したとき微妙なピッチや周波数の違いで音が濁って、それにトリップするような感覚を覚えた。音に囲まれて感動したような感じ。」

潜在的に「音」への興味を持った小学生時代。今もライブで演奏することがあるリコーダーは、小学生の当時から得意だったようです。

音楽の嗜好もバラバラ。ジャンルに捉われず、「感覚で好きなものを聴く」ことが多かったと言います。スピッツや宇多田ヒカル、エミネムなど、聴いていた音楽に統一性はありません。

ちなみに中学生時にはドラムに手を出すも8ビートまでで断念したらしいです。

宅録に目覚めた高校時代

4トラックのMTRを入手し宅録を始めたのは高校生。このときからアイデアやひらめきを遺憾なく発揮し、トラック作りに勤しみます。

――「風呂桶叩いたり、床叩いたりリコーダー吹いたり、親のギター鳴らしたりしてアナログな音でなんとか音楽を作って、そんな手法でかなり量産してた。」

高校時代に作成したトラック

同時期にはヒップホップのユニットでのライブも行っており、自然と音楽が生活の真ん中に存在していました。

高校3年生の頃にようやく取り入れた波形ソフト(サウンドエンジン)で、オーディオをコピーペーストする技術を得てからは、より曲作りが本格化。マイスペースにアップする流れで、不破(*参照記事)とも知り合います。

波形編集ソフト、サウンドエンジン

――「この頃から高校卒業後にかけてが人生で1番曲作ってたし、1番いい曲も作れてた。」

サウンドエンジンを得て、アナログで培われたアイデアや感覚をより高い精度で再現でき始めたabelest、同時期に映像作品にも興味を示します。

映像クリエイターとしても活躍している

音楽・映像に深入りした大学時代

大学進学後はlogic proを導入。いよいよトラックメイクの神髄に触れていきます。

当時は、現在IDMやエレクトロニカの国内第一線を張るミュージシャンらとも交流しつつ、かつラップグループに属するなど、トラックメイカー、ラッパーとして自身の好奇心とモチベーションの赴くままに活動を広げます。

北九州や久留米などでも活動するうち、徐々にabelestの名は浸透していきます。

abelestというキャラクター

「abelestっておもしろい奴がいるんだけど・・・」

かつて著者自身もそう紹介されたように、思わず人に紹介したくなるユニークな性格。利己的でなく、うざったいような野心もない自然体な彼。

少なからず人を困惑させる程には個性的。「奇才」という言葉をそのまま当てはめたようなabelest。それはもちろん音楽にも映像にも現れています。

この記事執筆にあたっても、あらゆる固有名詞の露出を制限した彼。無駄なプライドも持たず驕らず、しかし確かな才能を持つからこそ、図らずも人脈が広がっていくのでしょう。あらゆるジャンルのアーティストに支持される理由は、作品のクオリティだけではなく、思わず他人に「おもしろい人が居る」とつい紹介したくなる彼自身のキャラクターもかなり関係しているはずです。

小さな頃から自分の広げた両手に収まらない好奇心を引っさげて生きてきた彼ですが、音楽とは何なのでしょうか?後半では大学卒業後から現在に至るまでのストーリーや思想にフォーカスを当てます。

「矛盾するものを同居させたい」誰も読めない無類の奇才:abelest 後編(Coming soon…)

abelest:
福岡で音楽と映像を作っています。