「矛盾するものを同居させたい」誰も読めない無類の仙人:abelest 後編

text by 糸山晃司

abelestの半生にスポットを当てた前編に対し、今回は近況と、それから思考の深いところを掘り出します。

大学卒業後は映像制作会社に就職

――忙しくて音楽を作る時間がなかったけど、それでもなんとか時間を作って制作していた。

大学を卒業後は映像の世界へ足を踏み入れます。

この時期には時間がない中でも好奇心の向くままに活動を進めます。古アパートを、アーティストのレジデンススタジオとして改装した城南区のART HUB 三樹荘では、当時ハマっていた石油発動機を持ち込んで個展を開催。

三樹荘での個展の様子

石油発動機

手作りのアルバムは完売と、図らずも知名度は確実に増していきます。

16年には術の穴のコンピレーション「HELLO!!! vol.9」に参加。名実ともに日本のエレクトロを代表するレーベルからのリリースも実現します。

Koji Nakamuraに見いだされた才能

――いきなり話題になってびっくりしたけど、とんとんと話が決まって僕の曲をリミックスしてくれるまで話が進んだ。

彼がネット上で発表した楽曲「察知」をTwitterで取り上げて絶賛したのは他でもないKoji Nakamura。言わずと知れたスーパーカーのナカコーでした。

――リミックスの後、東京行く機会があったから一緒に飲みに行こうってなって!

もちろんナカコーがabelestをリミックスするという話題で周辺はざわつきます。

やりたい音楽をやりたいときに

――音楽は始めるもやめるもない、特別なものではない。 でもあくまでも「楽しい」からやってる。

最近は世界史に興味を走らせているabelest。彼にとっては音楽も同じように、ただ湧き出る興味のアウトプットの一つなのかもしれません。

――その時その時にいいと思った音楽を、ジャンルにも縛られずに作りたい。

音楽で固有のイメージを持たれないように、そして矛盾するものを同居させたいと話すとおり、abelestの音楽にはいろんな側面が見て取れます。ある時はシリアスであり、ある時はコメディ。もはやその多様性のちょっとのおふざけが彼のアイデンティティになっているような気がしますが。

振り返ればいつでも無意識に感覚で固有のイメージを壊そうとしてきました。

カテゴライズされるのをどこかで拒否し、一見無関係に見える点を星座のようにつなぐように常にいろんなこと・ものに流動的に好奇心を持つ。そんな意識がしみこんでいる彼の頭の中は、どうなっているのでしょうか。

――これまで文脈を無視してちぐはぐにやってきた。世界史にしても人類史にしても、勉強することで自分の中に時間が加わる感覚。でもまだまだ確立はされてない。

馬鹿と天才は紙一重です。

でも周囲にいる人は、どこかabelestが「天才」寄りであることは分かっている。彼の話をする人はみな、口をそろえて賛辞を送ります。

インターネットが加速させた電子音楽世界の中で、福岡から異彩を放ち続けるabelest。まるでスクショするような感覚で、ありとあらゆるものをサンプリングして調理する彼の音楽は、専ら「斬新」と表現されます。

どうやったらそのアイデア思いつくの!?と突っ込みたくなるような素材ですが、彼にしてみればごく自然に面白いと思った結果なのです。

音楽にも映像にも他の趣味にも、通じているものは「好き」という気持ち。

好きだと思った気持ちにはフタをせず。

一見、奇妙とも思える彼の好奇心の行く先々には、いつだってどこか人を寄せつける魅力がまといつきます。

ほら、彼の音楽気になってきたでしょう?

abelest:
福岡で音楽と映像を作っています。