「シーンを牽引するアイコンへ」奔走する野望:MADE IN HEPBURN 森山タカヒロ 後編

text by 糸山晃司

過去の活動や音楽遍歴を振り返った前編に続き、ここからは近年、そして未来の話になっていきます。

森山タカヒロBANDを終えた森山は、同メンバーを中心に新プロジェクト「MADE IN HEPBURN」を始動させます。

これまでの邦ロック前回だった楽曲から一転、シンセを使ったエレクトロに日本語の歌詞を載せた緩めのポップス。

既存の音楽家に例えるのはナンセンスだが、ceroやミツメを思い浮かべるような緩く肩を揺らすようなジャンルに変遷を遂げていました。

アパレルとしてパッケージされる音楽

――ただ好きな音楽をやりたいっていうリスタートじゃなくて、例えばアパレルと一緒にパッケージされやすい音楽を目指したらこうなった。カルチャーを一段階盛り上げるのに、音楽という立ち位置から一役買いたい、というのが理想です。

新しい音楽性についてはメンバーとも自然と意見も一致し、無事活動をスタートさせましたが、長年続いた前身のバンドを終わらせること、新しいプロジェクトを始めることについて派手なアナウンスをあえてやらなかった理由。それは、彼にとって2つのバンドは同じ線上ではなく、全く違うプロジェクトであるからだそうです。

ただ名称を変えるのではなく、0からスタートさせるために引継ぎを曖昧にし、コンセプトも音楽も一新。よりカルチャーの一部に溶け込むために。

カルチャーを作りたいという野望

――MADE IN HEPBURNでやりたいことは、ただバンドをやって音楽を奏でるんじゃなくて、音楽以外のカルチャーを巻き込んで引っ張るアイコン的な立ち回り。音楽っていう括りじゃないところを包括してカルチャーとして括りたいってのが野望としてあります。どこまで具体的にできるか分かんないですけど。

WEBもスタートアップも地方のリアルに密着したアイデアから、よりローカルを前面に押し出したものがフォーカスされる昨今。WEBでの盛り上がりに音楽やアートが乗っかるには、影響力を持ったアイコンとなる「プレーヤー」が必要不可欠。

例えばこのNarrativeみたいなWEBメディアで「福岡面白いよ!盛り上がってるよ!」とアピールしたとこで、アイコンとなるバンドやクリエイターが全国区になっていかなければ、その盛り上がりは中身のない「作り上げられたもの」として終わってしまうんです。

順番は逆。

地方から沸き上がったカルチャーにフォーカスして広めるのがメディアの役目で、メディア自体が何かを生み出したものは虚像なんですね。

その沸き上がるカルチャーを音楽で先導しようとするのが森山タカヒロという人物なんです。

エレクトロバンドの難しさ

ただ、森山タカヒロBANDの時も、シーンを作ることは意識していたし、結果はシーンとして成り立ってはいたものの、それは狭いところでのシーン。例えば、当時のバンドにはホームとなるライブハウスがあって、どこか「〇〇でやってるバンド」というイメージが付いて回ってました。

MADE IN HEPBURNでは、そんな小さな括りを排除し、ましてや音楽という括りも排除しようとしています。

その柱であり、肝心な音楽。攻めなければオワコン、ありきたり。攻め過ぎれば難解、同じジャンルなら海外のもっと質がいい音楽聞いたほうがマシと揶揄されるエレクトロバンドの宿命。

もう熱が冷めてきたとも思われるジャンルにあえて足を踏み入れたMADE IN HEPBURN、森山タカヒロ。

カルチャーアイコンとなるには思想や戦略だけでなく当然音楽も良質でなければなりません。

一朝一夕では頭の出ないシーンではありますが、元来から森山の持つ日本語の独特な歌いまわしとシンセのエレクトロサウンド。聴いていると絶妙なバランスでキザったくない耳当たりが心地いいんです。

根底にあるのはいつも好奇心

――たまたま音楽が好きだから、そのまま好きなことを続けることに何の疑問もなかったですね。音楽やってるけど括りはバンドマンじゃないかもしれない。イケてる人であり続けたいです。

かつて森山タカヒロBANDで成し得たYOKA fes。あの経験をもっとスケールの大きなとこで生かしたい。それには音楽だけじゃなくて、アパレルやアートやWEBを含めた総合カルチャーとの距離をいつも意識し、少しも離れるわけにはいきません。

根底にあるのは昔からずっと好奇心。

これまでもこれからも、音楽が好きという気持ちがただただ自身を走らせます。

今度はバンドシーンにとどまらず、福岡のアートカルチャーを背負う存在になるべく、森山の野望はまさに今走り始めたばかりです。

森山タカヒロ:シカゴ発?福岡在住グループ MADE IN HEPBURNのメンバー。ボーカル、ギター、シンセサイザー、サンプラーなど用いて様々なスタイルの音楽を発信しつつ、周りの面白い人を巻き込みながら飄々と活動中。元ヤン。
Twitter,MADE IN HEPBURN