「寄せては返す人間模様」孤高のシンガー:フジモトジン 後編

text by うえみずゆうき

神出鬼没。ギターと暇さえあればどこでも歌い始めてしまう。そんな生粋のシンガー「フジモトジン」の人間ドラマをお送りします。後編はBAND A脱退以降のストーリー(前編はこちら)。

やっぱ、俺歌いたいのかも

BAND A脱退後、これまで趣味程度に行なっていたソロ活動を本格的に始動させます。 「フジモトジン」の黎明期といえるでしょう。

「場数を踏まなければ」という思いから、精力的にライブ活動を行ないます。暇を見つけては、路上でも積極的に歌いました。 また、ソロ活動と並行してベースを弾くこともしばしば。 チャーリービーンズやMARACHなど、ソロ活動と二足のわらじで走り抜けました。

――ソロでライブに呼んでもらうことが増えてきて、自分の中で活動のバランスが狂ってしまって。やっぱ、俺歌いたいのかもなって改めて気づいて。歌一本でいきたいなってなっちゃって。だんだんバンドへのモチベーションが下がってきた。

27歳、チャーリービーンズを脱退。歌一本でいく決意を固めました。

メンバーの時間を奪うのがだんだんこわくなって

チャーリービーンズ脱退を契機に、ソロ活動を加速。飲み屋やライブで出会った優秀なミュージシャンたちをサポートメンバーに迎え、バンド編成での活動が増えていきます。「フジモトジン楽団」の名義で活動することもしばしば。

2014年~2016年、3年連続でサンセットライブに出演を果たします。一見、順調そのもののようですが、ずっと気になっていたことがありました。

――メンバーの技術に自分が追いつけていないという劣等感がずっとあって。気構えみたいなものも含め、全然。スケジューリングなんかも下手くそで、メンバーをうまくまとめきれずにいた。メンバーの時間を奪うのがだんだん怖くなってきて、申し訳ない気持ちだけがどんどん膨らんで。

自ら解散宣言をし、一人に戻ったフジモトジン。 「人と一緒にやれなくなった」と言いつつ、あくまでそれは自分の中の課題。今まで手伝ってくれた人たちには感謝してもしきれないといいます。

「俺は歌手です」って、ちゃんと言いたい

――完全に一人になって、色んなところに一人で歌いに行って、より一層歌の力を感じた。良くも悪くも、全部自分に責任があって。うまくいった日は最高に気持ちいいよね。

群れから弾かれ孤立するのではなく、自ら選んだ孤独の道。孤高のシンガーは、確かな一歩を踏み出しました。

――アコースティックギターからガットギターに持ち替え、ギターや歌に力みがなくなった。力が抜けたおかげで歌の表現力も上がってきた。

そう自己分析するフジモトジン。心なしか顔つきやフットワークまでも力みがなく軽やかに見えます。

――お金とか抜きにして、たとえ他の仕事をしてたとしても「俺は歌手です」って、ちゃんと言いたい。シンガーソングライターというより、本物の歌手でありたい。歌うことしか俺にはないから。

歌って喜んでもらえたら単純に嬉しい、「酒がすすむ」と言われるのは最高の褒め言葉だそう。

――余計なモノばかり考えちゃって、最近歌詞がなかなか出てこなくなってる。今の自分にしか見えない世界を、今ちゃんと言語化しないとダメなんだよ!うん、分かってるんだよ。がんばります(笑)

歌える歌(レパートリー)が増えていくことは、自分にとって財産が増える感覚なのだといいます。

出会いと別れを繰り返しながら、それでもなお足を止めることなく、歩き続けるということ。

シンガーとして、第一線で活躍し続けていく確かな覚悟が垣間見えます。

日々軽やかに、柔らかくなっていくその心は、歌声に変わり、生き様となっていくのでしょう。 孤高のシンガー「フジモトジン」。彼を取り巻く人間模様は、いつだって寄せては返す波のようです。